アメリカンフットボールのオフェンスには、様々なオフェンスの隊形があり、フォーメーションの選択が戦略づくりのカギとなる。そんなフォーメーションは、NFLなどで培われた過去のデータをもとに緻密に設計されたものが多く存在する。こちらの記事では、試合で負けない攻め方をするために必須の「アメフトのオフェンスフォーメーション」を徹底解説する。
メニュー
- Tフォーメーション(T formation)
- Iフォーメーション(I formation)
- シングルバック(Single set back)またはエース(Ace)
- スプレッドフォーメーション(Spread formation)
- プロセット(Pro set)またはスプリットバック(Split back)
- ショットガン(Shotgun)
- ピストルフォーメーション(Pistol formation)
- ウィッシュボーン(Wishbone)
- フレックスボーン(Flexbone)
- ウィングT(Wing T)
- エンプティバックフィールド(Empty backfield)
- タックルスプレッド(Tackle spread)
- シングルウィング(Single wing)
- ロンリーセンター(Lonely center)
- ワイルドキャットフォーメーション(Wildcat formation)
Tフォーメーション(T formation)
Tフォーメーションの説明
Tフォーメーションは、もっともシンプルでベーシックな歴史あるオフェンスの隊形である。3人のランニングバックがQBから5ヤード後ろにポジションすることでT字が構成されている。両タイトエンドのパターンと、1タイトエンド1ワイドレシーバーのパターンはどちらもメジャーなTフォーメーションの隊形である。
Tフォーメーションのポイント
Tフォーメーションのメリットは、ランプレイに強い点が挙げられる。ランニングバック3人が備えているため、複雑なオプションプレイの展開ができる上に、すべての穴(オフェンスラインがつくる隙間)に対して攻めることができるためである。
Iフォーメーション(I formation)
Iフォーメーションの説明
Iフォーメーションは、Tフォーメーションが進化してできた最もベーシックなオフェンス隊形の一つであり、どのリーグにおいても良く用いられる。QBの後ろにフルバックとハーフバック(テイルバック)が一列に並ぶIバック体型をしき、両サイドにはワイドレシーバーが配置される。ハーフバックは、通常スクリメージラインから6−8ヤードの位置である。
Iフォーメーションのポイント
Iフォーメーションは、ランプレイとパスプレイどちらにも適しているオフェンス隊形であり柔軟性が高いところがポイントである。ハーフバックはディフェンスを見渡せるため弱点を見極めることができる。フルバックは「ラン」「ランフェイク」「ブロック」「リードブロック」「パスプロテクション」とマルチな動きができる必要があり、プレイを成功させるための鍵となる。
シングルバック(Single set back)またはエース(Ace)
シングルバックの説明
シングルバックはその名の通り、一人のランニングバックがQBの5ヤードほど後ろに配置される。別名エースやワンバックとも呼ばれ、「3ワイドレシーバーと1タイトエンド」や「2ワイドレシーバーと2タイトエンド」などのバリエーションがある。
シングルバックのポイント
シングルバックは、パスプレイに適したフォーメーションである。パスを得意とするレシーバー陣であればパスのみで攻めるもよし、走れるレシーバーであればリバースプレイの展開も可能である。
スプレッドフォーメーション(Spread formation)
スプレッドの説明
スプレッドは、左右対称にWRが配置されたバランスの良いオフェンスフォーメーションである。パスもプレイアクションも得意とし、リバースなどの展開も可能である。QBが下がってショットガンとしてもスプレッド体型は用いられることがある。
スプレッドのポイント
パスもランも対応できるバランスの良いオフェンス隊形である。ショートゲインもロングゲインも狙えるフォーメーションであるため、多くのチームに採用されている。
プロセット(Pro set)またはスプリットバック(Split back)
プロセットの説明
プロセットは、スプリットバックとも呼ばれ、QBを中心にランニングバックが左右に並び、TEがいるストロングサイド側にFBが配置される。
プロセットのポイント
Iフォーメーションと特徴は似ており、ランプレイとパスプレイどちらにも適しているオフェンス隊形であり、柔軟性が高いところがポイントである。
ショットガン(Shotgun)
ショットガンの説明
クォーターバックがスクリメージラインよりも5−7ヤード後ろに立ち、センターのスナップを受けてプレイが開始される。ランニングバックは、クォーターバックの横に一人配置されている。
ショットガンのポイント
ショットガンフォーメーションは、パスプレイを主軸に設計された体型である。クォーターバックが離れているのでパスプロテクションには余裕がありブリッツにも対応しやすい。走れるクォーターバックであれば、スクランブルのランプレイでゲインすることもできる。弱点としては、ロングスナップなのでスナッパーのミスが生まれやすいのに加え、ディフェンスにパスプレイだと読まれやすい点といえる。
ピストルフォーメーション(Pistol formation)
ピストルの説明
ピストルフォーメーションは、シングルバックとショットガンを融合した体型である。クォーターバックとスクリメージラインの間は、ショットガンよりも短く4ヤードほどである。
ピストルのポイント
ピストルの特徴は、パスプレイのみでなくランプレイのバリエーションも広げられる点である。ショットガンよりもスナップの距離が短いため、ドロー、カウンター、オプションのランプレイを展開しやすく、ディフェンスから読まれにくいプレイの選択が可能である。
ウィッシュボーン(Wishbone)
ウィッシュボーンの説明
ウィッシュボーンは、フルバックがクォーターバックの後ろにつき、ハーフバックが両サイドに配置される。両タイトエンドのパターンと両ワイドレシーバーのパターンがあり、フォーメーションとしては左右対称で、両サイドにプレイを展開することができる。
ウィッシュボーンのポイント
ウィッシュボーンは、ランプレイのトリプルオプションのために設計されたフォーメーションであり、左右どちらにもプレイを展開することができる。クォーターバックと3人のランニングバックの息が合うことで効果的なオプションプレイが実行できる。
フレックスボーン(Flexbone)
フレックスボーンの説明
フレックスボーンは、ウィッシュボーンの派生系のフォーメーションであり、両タイトエンドがワイドレシーバーとなり左右に広がっている。ハーフバックは、タイトエンドの横後ろにつきウィングバックとしてラン・パスともに参加できるようになっている。
フレックスボーンのポイント
フレックスボーンとは、その名の通りウィッシュボーンよりも柔軟性が高まったフォーメーションである。ウィングバックがモーションしてトリプルオプションに参加することもできる一方で、積極的なパスプレイを展開することもできる。
ウィングT(Wing T)
ウィングTの説明
シングルウィングとTフォーメーションを融合したフォーメーションであり、ウィングバックは一人配置されている。
ウィングTのポイント
ウィングバックのモーションでディフェンスを錯乱させることも可能であり、シンプルなランプレイやパスプレイも展開することができる。ウィングバックの特性によって、展開できるプレイが変化してくるのでウィングバックとして配置する選手は慎重にする必要がある。
エンプティバックフィールド(Empty backfield)
エンプティバックフィールドの説明
エンプティバックフィールドはファイブワイドとも呼ばれ、5人のワイドレシーバーが配置されるフォーメーションである。クォーターバックは、ショットガンのようにスクリメージラインから離れることも可能だ。
エンプティバックフィールドのポイント
エンプティバックフィールドは、パスプレイに特化したフォーメーションである。ロングゲインを必要としているときに選択されることが多く、ディフェンスもパスプレイであると読むことができるため、ディフェンスバックとワイドレシーバーの熱い勝負が展開される。なお、モーションしてランプレイが展開されることも稀にある。
タックルスプレッド(Tackle spread)
タックルスプレッドの説明
タックルスプレッドは、両タックルがワイドレシーバーの位置まで広がるフォーメーションである。ボールの捕球資格はないため、ブロックのみを行うこととなる。NFLでは、エモリー&ヘンリーフォーメーションと呼ばれている。
タックルスプレッドのポイント
タックルスプレッドは、マイナーなフォーメーションであるためほとんど利用されることはない。たまにディフェンスを混乱させるために採用され、ディフェンスがアジャストしている隙きを突いてクイックなパスプレイが展開される。
シングルウィング(Single wing)
シングルウィングの説明
シングルウィングは、最も古いオフェンスフォーメーションの一つであり、タックルを 2人並べてラインナップするアンバランス・ラインである。クォーターバックは存在するが名前のみのクォーターバックであり、センターからのスナップを受け取るのは、テールバックである。
シングルウィングのポイント
シングルウィングは、ランを中心としたフォーメーションであり、ランニングバックがセンターから直接スナップを受け取る。
ロンリーセンター(Lonely center)
※ポジションのバリエーションが多いため、センター以外のポジション名は記載していません。
ロンリーセンターの説明
ロンリーセンターとは、センター(正しくはスナップする人)が一人で独立してポジションしてボールをスナップするフォーメーション。上図は、右に寄っているが、センターはどこに位置してもOK。センターの左右にOLがいない点がポイントだ。※アイランドフォーメーションは、センターがOLから独立してるのは同じだが、バックスがセンターの近くに寄っているフォーメーション。
ロンリーセンターのポイント
ロンリーセンターは、相手を混乱させるのが特徴だ。ディフェンスがセンターの近くにいれば斜めにスナップしてDLを回避したり、ディフェンスがセンターの近くにいなければ真後ろにスナップして縦に攻め込むなど、相手を撹乱する戦法を取ることができる。(ロンリーセンターの例:NFLの動画)また、タイトエンドなどがスナッパーを務めることで、スナップ後に有資格者となって更に戦術の選択肢を増やすことができる。
ワイルドキャットフォーメーション(Wildcat formation)
ワイルドキャットの説明
ワイルドキャットとは、従来のクォーターバックのポジションにテイルバックが入る異例のフォーメーションであり、テイルバックがセンターから直接スナップを受け取ってプレイが開始される。ラインは、タックルを 2人並べてラインナップするアンバランス・ラインであることが多い。
ワイルドキャットのポイント
スナップを受けたテイルバックが中央突破したり、インモーションしてくるウィングバックにハンドオフしたりとランを中心としたプレイ展開が強みである。時間のかかるランプレイが多いため、オフェンスラインが強いチームで有効なフォーメーションといえるが、外から差し込んでくるようなブリッツに弱いので注意が必要だ。
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