アメリカンフットボールの試合を観ているとワイルドカード(Wild Card)という言葉を耳にするが、普段聞き慣れない言葉のため何を意味しているのかわからない方も多いといえる。ワイルドカードの意味とNFLで用いられている制度についてご紹介する。
ワイルドカードの意味
ワイルドカードとは、トーナメントへの参加権を本来はもっていないチームが、特別に参加できるように設けられた特別枠である。例えば、全5リーグの各1位しかトーナメントに参加できないが、特別に「最も勝ち点の高い2位のチーム」をトーナメントに参加できるようにする枠を設けたとする。そうすると「5つのチーム + ワイルドカード1枠」の6チームがトーナメントに参加することとなる。このように設けられた特別枠のことを、ワイルドカードと呼ぶ。
基本的に、ワイルドカードとは特別枠のことを指すが、使い方によっては特別枠として出場するチームを指すこともある。なお、ワイルドカードという言葉自体は、アメフトに限らず、あらゆるスポーツにて用いられる一般的な用語である。
NFL におけるワイルドカードの仕組み
NFL では、2つのカンファレンスで構成されており、それぞれに4つの地区が存在する。
・AFC(アメリカン・フットボール・カンファレンス)– 4地区(北、南、東、西)
・NFC(ナショナル・フットボール・カンファレンス)– 4地区(北、南、東、西)
それぞれのカンファレンスの地区ごとにレギュラーシーズンを戦い、優勝したチームがプレイオフ(トーナメント)に進出してスーパーボウルを目指す。そのため、プレイオフに確実に進出できるのは、計8地域それぞれの優勝チーム計8チームである。
しかし、NFL には、ワイルドカードとして、各カンファレンスにそれぞれ2つの特別枠が設けられている。各地区優勝チームを除いた勝敗ランキングで、各カンファレンスの上位2チームがワイルドカードとしてプレイオフに参加できるのだ。
つまり、NFLのプレイオフに進出できるチームは以下の12チームとなる。
AFC(アメリカン・フットボール・カンファレンス)
- 北地区の優勝チーム
- 南地区の優勝チーム
- 東地区の優勝チーム
- 西地区の優勝チーム
- 上記の優勝を除く勝敗ランキングの1位チーム(ワイルドカード)
- 上記の優勝を除く勝敗ランキングの2位チーム(ワイルドカード)
NFC(ナショナル・フットボール・カンファレンス)
- 北地区の優勝チーム
- 南地区の優勝チーム
- 東地区の優勝チーム
- 西地区の優勝チーム
- 上記の優勝を除く勝敗ランキングの1位チーム(ワイルドカード)
- 上記の優勝を除く勝敗ランキングの2位チーム(ワイルドカード)
上に示された4つのチームがワイルドカードとして、プレイオフ(トーナメント)に参加することができ、スーパーボウルまで勝ち上がることを目指す。
ワイルドカード枠が存在する理由
ワイルドカードがあることによって、レギュラーシーズンにおける地域の戦力格差を是正できるためと考えられる。例えば、北地区に強いチームが集中している場合、北地区の2位チームが、他地区の優勝チームよりも圧倒的に強いといったことが想定される。この状況下で、ワイルドカードの制度がない場合、北地区のチームはプレイオフを目指す上で不利な状況となってしまう。
そのため、ワイルドカードがあることで、レギュラーシーズンにおいて、優勝できないが他の地区よりも相対的に強いチームが競争するインセンティブを提供することができるのだ。過去にワイルドカード枠がスーパーボウルを制覇したこともあるため、ワイルドカードの出場チームもあなどれない。