アメフトで起こりやすい怪我の中でもっとも危険であるものは脳への障害である。現に、アメフトの怪我の頻度でも捻挫、筋損傷、打撲に次いで脳震盪は4番目に多い怪我である。アメフトでは、脳へのダメージや後遺症を残さないために脳震盪に対しては非常に慎重な対応がされているため、こちらの記事ではその脳震盪に対するガイドラインと対策についてご紹介する。
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そもそも脳震盪とは
脳震盪(のうしんとう)
脳振盪とは、頭、顔、首、あるいはその他の身体部位へ推力が働き、その衝撃が頭部に伝わることで発生する脳障害である。脳振盪は、意識消失や他の明らかな徴候を伴わないで発生する場合もある。
繰り返して脳振盪を起こすことは、過去の脳振盪(数時間前、数日前、数週間前)から脳が回復しないうちに脳に障害を与えることになるので、回復が遅れたり、障害が長期化する可能性を高める。
慢性外傷性脳症(CTE)
CTEとして有名な慢性外傷性脳症は、最も注意したい脳症の一つである。脳震盪などの脳への反復する傷害が原因となり、進行性の脳変性による脳症をきたすことを意味する。死後の脳の病理学的検査でしか診断することができないものであるが、NFLの健康安全対策部門の幹部は、アメフト競技とCTEとの関連を認めている。
アメフトで起きる脳震盪のサインと症状
脳震盪を見分ける2つのポイント
脳振盪と判断するために、試合のときでも練習のときでも選手の以下の2点を見極める必要がある。
- 頭部に急激な衝撃を与えることにつながる頭部または身体への強烈なヒット
- 選手の思考や身体機能などの変化(詳細は、以下を参照)
スタッフが確認できる脳震盪のサイン
休息しているときでも活動しているときでも、脳振盪に一致する徴候や症状を示している選手は、すぐに練習あるいは試合から外し、適切な判断でスタッフから許可がくだされるまではプレーに戻るべきではない。
- ぼーっとしている
- アサイメントやポジションを間違える
- プレーを忘れる
- 試合、点数、相手が確かではない
- 動作がぎこちない
- 質問しても返答がゆっくり
- (短い時間でも)意識を失う
- 行動や性格が変わる
- ヒットされたときや倒れたときより前の記憶がない
- ヒットされたときや倒れたときから後の記憶がない
選手が気付ける症状
- 頭痛または頭に感じる圧迫
- 吐き気、嘔吐
- バランス感覚の障害、目眩(めまい)
- 二重に見える、ぼやけて見える
- 光に敏感になる
- 音に敏感になる
- だるく感じる、ぼんやりとする、ふらつく
- 集中力や記憶力の障害
- 錯乱している
- 気分が優れない
脳振盪が疑われた際に取るべき行動(公式規則)
以下は、公式規則にもとづいて要点をまとめた点である。引用文まで読み込んで、脳震盪の疑いがある選手がいる場合は適切に対応できるようにしましょう。
- 激しいヒットが発生したら脳震盪のサインと症状を確認する
- 脳震盪の疑いがある際はプレイから外す必要がある
- 経験のあるスタッフが許可するまでプレイに戻ってはいけない
- 脳震盪と判断される場合は、少なくともその日一日はプレイから外れる必要がある
1. 選手をプレーから外す。選手が頭部にヒットされたら、脳振盪の徴候や症状を確認する。選手に拒否させてはならない。脳振盪ではないと選手は答えるものである。
2.適切な医務担当者が選手を診断する。負傷の重症度を選手自身で判断させてはならない。認定アスレチック トレーナーやチーム ドクター、あるいは脳振盪の評価、管理に経験のある医務担当者に選手をすぐに見てもらうこと。
3.脳振盪の評価、管理に経験のある医務担当者が許可するまで選手をプレーに戻してはならない。選手がプレーに戻るまでに必要とされる時間を考慮するために、医務担当者が臨床的スキルやプロトコールに基づくことを許容する。プレーに戻るまでのステップは、接触の激しさやリスクに応じて段階的に選手個人に合わせたものにしなければならない。担当医師が所属する団体により策定された脳振盪の管理プロトコールに従うこと。
4.ゲーム プランを作る。選手は医務担当者の許可が出るまでプレーに戻ってはならない。事実、脳振盪の管理は新しい科学により進歩しているので、ケアはより慎重になり、プレーに復帰するまでの時間は長くなっている。コーチは、選手が少なくともその日1日は外れるゲーム プランを作らなければならない。(引用元:アメリカンフットボール公式規則)詳細は、www.NCAA.org/health-safetyおよびwww.CDC.gov/Concussionに掲載されている
“NCAA Sports Medicine Handbook Guideline on Concussions”を参考にすること。
脳震盪を予防するための対策
性能の高いマウスピースを着用する
マウスピースを付けることによって、脳に伝わる衝撃が緩和されるため、脳震盪の予防に繋がるという研究報告がされている。実際に、ボクシングでマウスピースの装着が義務化された後は、実際に脳震盪の発生率が激減しているため、脳震盪とマウスピースの関係性は高いといえる。自分の口に合った性能の高いマウスピースの着用が求められる。(*マウスピースとマウスガードは同義である)
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自分に合ったヘルメットを装着する
アメフトで頭部を守ってくれる唯一の防具がヘルメットである。大切なのは、自分に合ったヘルメットを選び、ヘルメットと頭の隙間を無くす必要がある。ヘルメットの内部には、空気を入れて調整できるクッションがあるため、ヘルメットのメンテンナンス時に空気圧のチェックをするのも欠かさないようにしましょう。チンストラップも適切な締め付け具合を保つようにすることが大切だ。
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脳震盪の疑いがある際はプレイから外れて休憩する
アメフトはヒットが繰り返されるスポーツであるため、脳震盪のリスクは常についてくる。脳震盪と判断されなくても脳震盪の疑いがある症状が繰り返される場合は、脳へのダメージが蓄積されていくものである。将来的な脳への後遺症を残さないためにも、疑わしき場合は軽んじることなく慎重に対応し、可能な限りプレイから外れて脳への衝撃を与えないように安静にするようにしましょう。
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